2017年8月24日木曜日

キュウリを酢飯と海苔で巻かないで

河童の妖怪が目印の 回転寿司は その日 とても混んでいた

待ち時間も長かったが その日は誰もが汗ばむ真夏日だったこともあり

あちらこちらの席で それはそれは美味しそうに 大人たちが 生ビールを飲んでいた

痛いほどに眩しい蛍光の LED照明の下で飲むビールなんて
うまいはずがないと 勝手に思い込んでいた ボクは 

その光景を目の当たりにし
そのつまらない先入観を捨て去らなければと 気付かされた

つまらない先入観は 人生の楽しみを減らし 
ときには 罪なき人も 悪人とされ
ときには 魔女として 吊し上げられ
ときには 辱めに合うこともある

嫉妬で作り上げれた 先入観は 暴力なのだ


とそんなわけで 生ビールを注文しようと思ったが
目の前に座っている嫁に「帰り、運転してもらっていいですか?」

が なぜか言い出せず

いつものように サラダ軍艦を10皿だけ食べることにした


サラダ軍艦も なぜサラダなんだ なんのサラダなんだ
と思い始めると 美味しさが半減してしまうので

河童の妖怪が 自信を持って握っているのであらば
こちらも 先入観と疑いを捨て まっさらな心で食べてこそ
美味しいと思えるんだ

そんなこと思考を巡らせながら
いつも以上に 清々しい気持ちで 食事を終え

会計を済ませて 店を出て 夜空に輝く星空と看板を 見上げると

そこにはもう 河童の姿がなかった

ボクはずっとそこに あの緑色の河童がいるものだと 思い込んでいた


ボクはまたしても 先入観に捉われていたことに気がつき

「河童に化かされたなぁ」 と小さく呟き 

一つ ニヤリとして 運転席に乗り込んだ



真夏の夜は 妖怪に要注意だ