2016年7月28日木曜日

かき氷がとけたら 君はそれを何と呼ぶ

かゆい


かかとがかゆい かかとがかゆい かかとがなんでかゆいんだよ

と 踵の痒みで 目覚まし時計より早く 目が覚めた


寝ている間に 蚊にでも 刺されたのかと思い 

研がれもしない ネイルサロンにも行っていない 
その爪という刃物で 痒い部分を 
掻き削りえぐり摂ってやろうと その刃を踵に向けると 

楕円の薄い皮が 踵から浮いて 取れかかっていることに気がついた


何日前に 久々に履いたスニーカーで 知らぬ間に靴擦れし
水膨れになり そのまま ほおっておいた傷跡が 自然治癒された 

その証として 薄皮が取れたんだ

ボクの心で騒ぎだっていた感情は 鎮まり 癒された 喜びを感じていた

それでも 踵は 痒かった

人は 小さなことでも 自分の中で変化が起こると いつだって痒みを伴う


高校生の頃 やっと伸ばした髪に 憧れのパーマネントウェーブをあてようと
当時流行っていた ツイストパーマと呼ばれた 其パーマネントウェーブをあてに 

美容室へ行った

ボサボサ頭を我慢して ここまで伸ばし 
美容師さんにやっと小綺麗にしてもらえる 喜び 

生まれた時から中学生までずっと丸坊主で 顔の細工悪く

高校生活が始まるととにかく髪を伸ばし 
不細工ヅラにボサボサ頭 モテる要素など 全く持ち合わせてなかった

そんなボクにとって 其の勇気ある変化は
「きっともしかしたら少しでも 何かが変わるのかも」
という 真に暗い世界に 差込もうしていた 一本の光だった


美容院の匂いが好きだ 

おしゃれにした お兄さんやおねいさんがいて とても眩しかった

初めてのパーマネントウェーブ液の匂いは 今でも覚えている


長い時間 椅子に座り 髪が仕上がり シャカシャカした布を外してもらう

そう 美容院でカットが終わった瞬間の あの清々しさは何にも例えれない

夢でも見ているような 感覚だった


「今日は髪を洗わないようにしてくださいね」

と噂に聞いていた言葉をいただき ボクは気持ちが高揚した

少しだけ生まれ変わった自分に 照れと痒みか感じながら帰宅し
家族にあまり会わないようように 自分の部屋に向かい
次の朝も 家族にあまり会わないように家を出て 電車に乗り学校へ向かった

「こんなに学校に行くのが 楽しいなんて ボク知らなかった」
と 一人で自転車を漕ぐ自分が 少しだけキラキラしているように思えた

そして 学校に着くと また心が照れ痒くなり始めた
それでもいつもの表情を必死で作り いつものように教室に入ると

そこでボクを迎えてくれたのは いつもの教室と いつもの空気感だった

「やっぱりそうだよな」 と思って 席についた

そうすると友人が話しかけてきた

「今日 湿気やばくね?」

そう ボクは もともと 天然パーマだった

いつものようにチャイムが鳴り いつものように授業が始まる

休み時間 廊下で アイツが あんまり面白いことも言ってないのに
あの子が 笑っていた 

ボクは そのまま早退することにした

そんなこと思い出して また心が少しだけ 痒くなった


いつか 知人の家に泊まり 真夜中に 右足のお母さん指を
蚊に刺されて 痒みを超えた それを体験したことを 思い出した

結局何と誰が悪いかって 誰も何も悪くなくて

全てはいつも自分なんだ


かゆい


2016年7月17日日曜日

戦う ということは


最近 よく図書館に行きます その図書館はわりと大きい建物で

3階に 自習できる部屋 会議室 喫茶店 
そして フリースペースという 自由な空間がある


自由な空間というだけあって もちろん 自習をする学生がいて 

いつもクロスワードをやっているおばさん 小さな声で小さな恋を語らう女学生 

自前のPCでインターネットに没頭するおじさん お弁当を食べる人 
そして下の階で集めた資料とPCを広げて なんとなく考え事をしているボクなどがいる

そこはそこそこ広く 人もそこそこいて 色んな人と時間を共有できる空間とされ

それぞれがそれぞれの世界 飛び込める そんなフリースペースなのである



その日

ボクは少し太っているので その日も エレベーターを使わず
階段でそこまで上がり 「登ったぞ」と少しだけ息を切らしながら
息を切らした自分に 少しだけの陶酔していた


階段を上がったすぐのテーブルで 黙々と自習をする男子学生が すぐに目についた


彼はイヤフォンをして 左右の足脚を激しく上下に揺すりながら
「チャっチャっチャっ」と 音を立てながら ガムを噛んでいた

「パーフェクト超人が現れた!」と ボクは心の中で思った

その日もそこそこ利用している人がいて 
面白いように 彼が視界に入る席しか空いていなかったので
ボクは恐れず そこに座った

彼が(たぶん聴いている音楽に合わせて)
左右にダンサブルに頭を揺らしながら ノートと参考書を行ったり来たりしている様が
なんとなくボクの視界に入ったが ボクはボクのやりたいことがあったので  ボクはボクの世界に 没頭していた

すると 彼が肩を揺らしながら 立ち上がるのが見えた

そして 左脚をちょっと前に出し 今度は体全体を 前後に小さく揺らして

両手の拳を アゴの下まで持ち上げた 

構えた

シャドーボクシングを始めた 

イヤフォンはつけたままだった

慣れない手つきで 軽そうな 弾道がブレた その弾丸(拳)は

とても静かなその空間にとって まさに晴天の霹靂だった


それから何発か パンチを打ったと思えば

急に彼は その拳をおろした

階段から おじさんが登ってきた

「ノーガードぶらし戦法だ」

 
おじさんは 小さく体を揺らす彼を すぅっとかわして


その先のトイレに向った 

彼の勝利だ

否 ちがう 

戦意を持たない者に対しての攻撃は 罪なのである

そして彼は 己の負けを認めるかのように また座り 
左右の足脚を上下を揺すりながら ふたたび勉強を 始めた


「そう、戦うべき相手はいつだって 弱い自分(己)なんだ。」と

ボクはメモ用紙に 雑な書き 紙飛行機にして 空へ飛ばした

いつかリングの上で 再び彼に会えることを願って

そして 自由に学べる空間が この街この国にあることの喜びを感じていた

今では空が笑わないから ボクは笑い方を忘れてしまうところだった



2016年7月13日水曜日

野菜売り場のニラが 束ねたテープが外れて バラバラになっていたのであった

駐車場の空き待ちをしていて 空いたと思ったら

順路を逆走してきた おばちゃんがそこに駐車してしまった

停めてからなんとなく気がついたようだった彼女は それでも

ボクとボクの車の 存在がなかったかのような素振りで 目もくれず

逃げるように小走りしたので ボクも小走りで追いかけ

やっと掴んだ彼女の手を強く引寄せ ギュっと こちらを向いた瞬間に 
キッスしてから 「ズルいのは どっちのほうだい?」 と尋ねた

それから逮捕されたのは ボクのほうだった

この世は そんな理不尽なことと 
そんなつもりでやったはずじゃないのにそうなってしまったことが
順番に 繰り返し 起こっている

しかし そんな出来事のほとんどは そもそも悪意なんてなく

受取手の そのときの気分や感情で 
それが悪いことだと 決めつけられてしまうのである

嫌われ者と悪者のほとんどは 誰かと誰かの偏見と妄想である


しかし感謝の亡い者と嘘つきは 罪深い 

本当に悪者かどうかの線引きは むつかしいようで 単純だ

その行動と発言のその奥とその先に 何があるかってことだ



と ここまで書いておいて なんでこんな事を書いたのかと ふと立ち止まる


今日 運転中に 右折待ちをしていて 対向車が停まって 譲ってくだすった
にも関わらず なんとなく他に気を取られて
譲ってくだすった対向車の方にアイサツをするのを忘れて 右折してしまった

ボクは 罪深い男なんだ

そんな感謝を失くした罪深いボクは 誰にも罰せられることもなく
明日も口笛を吹きながら 誰かに嫌われて 生きていくのだろう