2016年7月17日日曜日

戦う ということは


最近 よく図書館に行きます その図書館はわりと大きい建物で

3階に 自習できる部屋 会議室 喫茶店 
そして フリースペースという 自由な空間がある


自由な空間というだけあって もちろん 自習をする学生がいて 

いつもクロスワードをやっているおばさん 小さな声で小さな恋を語らう女学生 

自前のPCでインターネットに没頭するおじさん お弁当を食べる人 
そして下の階で集めた資料とPCを広げて なんとなく考え事をしているボクなどがいる

そこはそこそこ広く 人もそこそこいて 色んな人と時間を共有できる空間とされ

それぞれがそれぞれの世界 飛び込める そんなフリースペースなのである



その日

ボクは少し太っているので その日も エレベーターを使わず
階段でそこまで上がり 「登ったぞ」と少しだけ息を切らしながら
息を切らした自分に 少しだけの陶酔していた


階段を上がったすぐのテーブルで 黙々と自習をする男子学生が すぐに目についた


彼はイヤフォンをして 左右の足脚を激しく上下に揺すりながら
「チャっチャっチャっ」と 音を立てながら ガムを噛んでいた

「パーフェクト超人が現れた!」と ボクは心の中で思った

その日もそこそこ利用している人がいて 
面白いように 彼が視界に入る席しか空いていなかったので
ボクは恐れず そこに座った

彼が(たぶん聴いている音楽に合わせて)
左右にダンサブルに頭を揺らしながら ノートと参考書を行ったり来たりしている様が
なんとなくボクの視界に入ったが ボクはボクのやりたいことがあったので  ボクはボクの世界に 没頭していた

すると 彼が肩を揺らしながら 立ち上がるのが見えた

そして 左脚をちょっと前に出し 今度は体全体を 前後に小さく揺らして

両手の拳を アゴの下まで持ち上げた 

構えた

シャドーボクシングを始めた 

イヤフォンはつけたままだった

慣れない手つきで 軽そうな 弾道がブレた その弾丸(拳)は

とても静かなその空間にとって まさに晴天の霹靂だった


それから何発か パンチを打ったと思えば

急に彼は その拳をおろした

階段から おじさんが登ってきた

「ノーガードぶらし戦法だ」

 
おじさんは 小さく体を揺らす彼を すぅっとかわして


その先のトイレに向った 

彼の勝利だ

否 ちがう 

戦意を持たない者に対しての攻撃は 罪なのである

そして彼は 己の負けを認めるかのように また座り 
左右の足脚を上下を揺すりながら ふたたび勉強を 始めた


「そう、戦うべき相手はいつだって 弱い自分(己)なんだ。」と

ボクはメモ用紙に 雑な書き 紙飛行機にして 空へ飛ばした

いつかリングの上で 再び彼に会えることを願って

そして 自由に学べる空間が この街この国にあることの喜びを感じていた

今では空が笑わないから ボクは笑い方を忘れてしまうところだった



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