2014年10月26日日曜日

夏の思い出は


知らぬ間に 何かに追われているようなつもりなって

車で移動中に コンビニのパンを あわてて詰め込んだ

食事というよりも その時の空腹を ただただ誤摩化していた


そんな日々


食べるパンは いつも決まっていて 
同じゴミが 同じ白い袋に入れられて 車に溜まっていった


捨てることすらも 何かに追われていることのせいにして ほったらかしだった


白い袋とともに 憂鬱も ただただ溜まっていった


少しでも自分を慰めようと

コンビニで 少し値段の高い カツサンドを買ってみた

いつものように 車に飛び乗り 運転しながら
暗い車内で 手探りしながら 食べようとすると

パンとパンの間から カツだけ 助手席のシートとサイドブレーキの隙間に落ちていった



僕は一人で 大きな声を出した 自分でも驚くほどの大きな声だった

自分の大きな声を 久しぶりに聞いて あのときの記憶が蘇った





たくさんの 人と車 車と人が すれ違うことが突然怖くなって 

交差点の途中で立ち止まってしまったことがあった


「助けて」と 小さくつぶやいたけれど


世界も その場も 空気も 何も 変わる様子は なかった



あのときの 教室でもそうだった



僕の「助けて」は 

たくさんのトモダチの笑い声に かき消されてしまった



文化祭のときも 自主的に休んだ

そのほうが みんなが楽しいことは 僕にはちゃんとわかっていた

僕が みんなの悪者でないことも ちゃんとわかっていたつもりだった

でも心のどこかで 勝手に自分のことをせめていた



彼女は いつも みんなの少し後ろで笑っているような子だった


「その作家さんいいよね」


あのとき 彼女はボクに話しかけてくれた 3年間で一度だけだった

だから もう1冊持っていた その作家の本を貸した

僕は ただ 嬉しかった 


だから その本が返ってこなくても それでいいと思っていた


日に日に 彼女は 僕に話しかけることも 
近づきずらくなっていること 気がついていた わかっていた



卒業してから 一度だけ 彼女を見かけたことがあった


僕は思わず 「あ」と 声を出した


なにも 僕に気づかず 僕の横を 通り過ぎていく彼女は

化粧をしていて たくさんの友達と 楽しそうに歩いていた



小さな街の 違う世界の中を 僕も生きていて


小さな街の 違う世界の中を 君は生きていた



「ボクが死んだことになっている世界で」






2014年8月 長野県松本市GNUでの
『シネ部 自主制作動画祭り』で ボクが発表した 


「僕が死んだことになっている世界で」という作品の予告


本編DVDは 親愛なる友人たちに託しております

素人の作った たいへん お粗末なモノですが
少しでも少しでも多くの方 興味を持って下さった方に
観てもらえたら 嬉しいです



0 件のコメント:

コメントを投稿