2014年7月31日木曜日

あ と ず と き と バーで

こんばんちゅるうす かっくんです



「君の考えていることが わからない」
中学生の頃 先生にそう言われて 作文はいつも書き直しだった

誰かに共感してもらったり 「いいね!」と思ってもらえることが 何一つ出来なかった

それは この歳になっても変わらず というより
何歳ときかは忘れたけど それを諦めた

嫌われ者や目障りなヤツを通り越して 
透明人間として ここまで生きて来た


まだギリギリ十代で 新たな街で 初めての一人暮らしを始めたころ 
話が合う人と全く出会えずに ただ一人で悩んでいた
今までの自分の生き方に 疑問しか感じなくなり
女装をしなければ 外出できなくなってしまった

金髪ロングヘアの カツラを被り 
当時流行り出していた 「白ギャル」メイクをしていた


渋谷のギャルサーに入れば 
魂がつながっている ソウルメイトに出会えるとインターネットで知り

当時流行っていた ミクシィから コンタクトを取って
その白いギャルたちのサークルに入れてもらった

付けられた名前は 「三輪さん」だった

ボクはそういう意味での 魂のやりとりはできなかったので
すぐにサークルも 女装を卒業することにした


サークルを辞めますと言って ボコボコに ボコられた帰り道

渋谷のセンター街に 「ウミウシ博」という雑なポスターがあった 入場は無料だった

案内のまま 雑居ビルに入ると そこには 
5つほどの水槽に 何頭かのウミウシが 展示してあった

その一つに「テレパシー体験コーナー」というモノ があって
その水槽には アメフラシが1頭 入っていた

それをじっと見つめていただけだったが 次第に水槽が スミで真っ黒になった

そこにいた スタッフの人が
「これはすごい!こんな人は初めてだ!才能であふれている!」
と  とても驚いた

ボクはこのとき 生まれて初めて人に褒められた

「君には超能力の才能がある!つぎのステージへ行かないか?」
と 熱烈に誘われて 15万円支払い 山梨での大合宿に 参加することになった

まず始めに 温かいお茶 それから褐色の錠剤を飲まされた

なんだろうと   思っているうちに 立ち上がれなくなり
ボクは その恐怖から 「キョーイ!キョーイ!!」と叫び続けた
それから 座っていた座布団の その下に吸い込まれるような 感覚になり
それが次第に 楽しくて仕方がなくなり 
ボクは「キョーイ!キョーイ!!」と叫び続けて 朝が来た

ハッと気がつき 合宿所を 慌てて飛び出した

でも あのとき褒めてくれたあの人に お礼だけ言いたくなって
合宿所にもどり 結局1週間のプログラムをこなした

あの錠剤は 飲んだフリだけをして飲まず
とにかく「キョーイ」と叫びつづけ  座禅を組み続けた


それから その次のステージには進まないことにした


合宿で無くした貯金を取り返そうと 始めた回転寿司のアルバイト
先輩のヒトミさんは ボクのお皿の洗う様を 褒めてくれた
ボクは 本当に嬉しくて バイトのたびに 率先して洗い場に立った

風邪をひいた ということにして休んだ日も ヒトミさんは心配してメールをくれた
申し訳ない気持ちでいっぱいになったけど ボクはウイニングイレブンを続けた

そんなヒトミさんが「天の川って 見たことない」とボクに話した

その頃がちょうど見頃で 地元に いい天体観測スポットも知っていたので
二人が休みの日に 見に行く約束をした

片道3時間のドライブ マイカーを持ってから 初めて洗車をした
ガソリンを満タンにして 待ち合わせの場所 待ち合わせ時刻

それから何時間たっても ヒトミさんは来なかった



数日後のアルバイト
ヒトミさんは 楽しそうに他のスタッフと 会話をしていた
なんとなく ボクと目を合わせないようにしているように感じた

それからボクらは アイサツをするだけの仲になった

ボクは ただ天の川を見てもらいたいだけだった
ボクらは 織姫でも彦星でも なんでもなかった

皿洗いをしながら 指先から 透明になっていくのがわかった

透明人間になった バイトの帰り道 どこかで蚊に刺された

自分の存在に気がついてもらえたことが嬉しくて
その蚊が なんだか愛おしく思えた


そんな 夏の思い出

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